2005年9月26日

【のまネコ】なぜ著作権で満足せず,商標出願をするのか

あーあ、これでとうとう自分の記事がメインから消えるんじゃないかな。
ところで今日、のまネコのウェブリングに入ってみました。
一番下にバナーあります。

****ここから(9月26日掲載)


「のまネコ」の著作権は,有限会社ゼンにあり,有限会社ゼンは,わた氏からこれを譲り受けたとのことです。つまり,わた氏が創った製品を有限会社ゼンが譲り受け,さらにエイベックスがこれを借りているといった構造です。

<わた氏>→<有限会社ゼン>→<エイベックス>

では何故,有限会社ゼンは,わた氏から譲り受けた著作権で満足せず,さらに商標登録の出願まで行ったのでしょうか?
それは,わた氏から譲り受けた著作権なんて権利は,きわめて曖昧なものであるため,確固たる権利である,商標権を取得する必要があるためです。

著作権を持っていると,これを侵害した者に対して,差止請求をしたり,損害賠償請求をしたりすることができます。
ここでいう著作権とは,「創作的に表現したもの」である必要があります。つまり,世の中に完璧なオリジナルはありえず,必ず何か既存の作品の発展型にならざるをえません。その際,単なるコピーではなく,新た独立に保護に値するといえるためには,「創作的」である必要があるのです。ここで,「創作的」とは,著作者の「個性が現れていれば足りる」というのが一般的な考え方です。
しかるに,わた氏のフラッシュをみると,もともとアスキーアートであったキャラが,わた氏の筆致によって滑らかな線画になり,さらに動画になっているわけですから,この範囲で「創作的」であると言えると思います。よって,わた氏は,まぎれもなく著作権者であり,これを有限会社ゼンは譲り受けたというわけです。
しかし,あくまで「創作的」であるのは,上記範囲にすぎません。線画あるいは動画になった,フラッシュの中のネコたちの著作権を持っているに過ぎません。よって,例えばこのフラッシュのネコそのものをパクると,それは著作権侵害ですが,従来のアスキーアートに対しては,わた氏(有限会社ゼン)は何ら「創作的」ではないため,これらをいくら使っても,彼らの著作権を侵害したことにはならないのです。
そんなん著作権もってますーって宣言するだけで,従来から存在したものを独占できちゃうわけないでしょ。

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コメント

はじめまして。webリングからたどってきました。

従来ある「モナーのAA」に対して、"わた"氏の線画が異なるというのは分かります。

では、従来ある「モナーのAAを線画化したもの」と比較すればどうなのでしょうか? "わた"氏の線画化が持つとされる「創作性」というのはそれらを前提にしても認められ得るのでしょうか? 従来あるそれらとの区別は事実上不可能であると私個人は思いますが、それが正しいとする場合「"わた"氏の線画化には創作性がない」という主張は成り立ちうるのでしょうか?

教えて頂ければ幸いです。

jo_30さん
はじめまして、初めてウェブリング経由のコメントをいただけて嬉しいです。

だから例のコメントは「アスキーアートを制限しない」という言い方なのかなーと私個人は思いますがどうなんでしょうね?
とてちてた氏もここを見ているはずなので、直接じゃなくてもなんらかの形でお返事をもらったらこちらにも反映します(でも最近忙しい説あり。気長にお待ちください)。


ここからはこまちゃが勝手に考えたつぶやき。

モナーの線画はこれまでにも多数発表されている

つまり今回のわた氏の著作権は筆致によってのみその創作性が認められているってこと?

そりゃこの段階では他の人のモナーなんて制限できんわな・・・。

すると問題はやっぱり「商標登録で制限されるもの」か。

いやいや。

それで商売しようと言う 企 業 姿 勢
が根本的な問題なんですが。

jo_30さん,

ご回答おそくなりました。元ネタ執筆者のとてちてたです。
お尋ねの件について,結論としては,わた氏による線画化という行為そのものには,創作性はないという主張は成り立ち得ます。ただ,少なくとも,わた氏が描いたキャラそのものについては,創作性が認められると考えます。

たしかに,アスキーアートの線画化は,これまで多数なされています。わた氏がはじめてではありません。
よって,「線画化」(アスキーアートに必然的に存在する空間を線でつなぐこと,線をなめらかにすることなど)そのものについては,当然に創作性は認められません。
すなわち,わた氏による線画化という行為そのものには,創作性は認められません。

ただ,線画化といっても,それは作者によって千差万別です。ひとつとして同じものはないでしょう。
区別は事実上不可能とも考えられますが,相対的には違いがあるでしょう。よって,少なくとも,他と相対的に区別されるという範囲で,わた氏が描いたキャラに,わた氏の創作性が認められる可能性があります。
とはいうものの,たしかに「似たようなものがたくさんある」ことは間違いありません。
よって,単体のネコの絵としては,わた氏に創作性が認められうるのは,自分が描いたキャラに限定されると考えてよいでしょう。わた氏のネコをそのままコピーしてパクれば,著作権侵害になりえますが,それとてあくまでそのまま限定です。
このように,わた氏の著作権=有限会社ゼンが譲受したもの,といっても,きわめて実効性がないものです。よって,商標出願にふみきったものと思います。

ただ,(問われていないことですが)動画化については,わた氏の創作性の幅はひろがるでしょう。そのままコピーでなくても,似たようなネコが,同様の動作をとっている動画をつくると,著作権侵害になりえます。

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