2005年9月26日

【のまネコ】原則→例外 その2 阪神タイガース応援歌事件

なんか自分の記事がすべて消えそうな勢いだなー。

法的でなく社会的に問題あるやろ、と言う方向しかないって話に進んでいく・・・
まあ、そこらへんはあらかじめあちらさんも押さえてあるんでしょうね、やっぱり。

ところでこんだけ反対運動がおこるのも想定の範囲内なのかしら?

*****ここから(9月25日掲載)

エイベックスが何を作って何を売ろうが原則として自由であり,これが制限されうるのは例外的な場合である,ということをこれまで論じてきました。
例外的に制限される場合として,典型的に考えられるのは,他者の権利を侵害する場合です。裏を返せば,他者の権利を侵害しない限り,何をしてもかまわないというのが,この社会なのです。しかるに,本件は具体的な他者の権利が観念できないため,例外に転ぜず,原則どおりになってしまうのです。

ただ,少なくともてめえのものではないのに,てめえのものの如く商売するのがけしからん,というのは至極まっとうな価値判断です。
この点について,著作権法は,民事上の責任ではなく,刑事上の責任を定めています(具体的な権利侵害があり,その被害者の被害回復を求めるのが民事ですが,悪いことをした人を国家に処罰してもらうのが刑事です)。
著作権法121条において,「著作者でない者の実名・・を著作者名として表示した著作物の複製物を頒布した者」は,「1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金」に処せられると規定されています。
では,エイベックスが「著作者でない者の実名・・を著作者名として表示した著作物の複製物を頒布した者」に該当しないでしょうか。もし該当するとすれば,刑事上の責任を問われるかもしれないということがプレッシャーとなって,抑止力が働き,エイベックスの行為は(間接的ながら)例外的に制限されることになります。

ところが,誠に残念ながら,結論としては「著作者でない者の実名・・を著作者名として表示した著作物の複製物を頒布した者」とは言い難いようです。
エイベックスは「著作者でない者の実名・・を著作者名として表示した」すなわち,「著作者を騙った」といえるでしょうか。
事実関係は,有限会社ゼンhttp://www.e-zen.info/という,いかにもチックな会社が,「のまネコ」の著作権を管理し,エイベックスはこの有限会社ゼンから,「のまネコ」の商品化契約を受けているとのことです。

 <有限会社ゼン> ― 商品化契約 ― <エイベックス>

なんか巧妙ですなあ。有限会社ゼンは明らかに,著作者=著作物を創作した者ではありません。ここで有限会社ゼンが「著作者」だと言えば問題になるのですが,「著作権を管理」と言っています。
よって,少なくとも「著作者を騙った」とはいえません。

他方で,有限会社ゼンが「著作権を管理」しているという根拠は,「のまネコ」の著作権を持っていたと自称する,わた氏http://csx.jp/~damemushi/ から,著作権を譲渡されたことにあるようです。

 <わた氏> ― 著作権譲渡 ― <有限会社ゼン> ― 商品化契約 ― <エイベックス>

おっと,わた氏は「著作者を騙った」と言えるのではないかと思えます。しかし,たとえ,わた氏が「著作者を騙った」と評価されうるとしても,同氏は「著作物の複製物を頒布した」わけではないので,やはり著作権法121条の対象にはなりません。

あーあ,残念。あまり景気のいいことを書きませんが,私は決してエイベックスとその一味を擁護しているわけではないので,誤解しないください。
今年の春に,阪神タイガースの応援歌の作者を騙ってCDを販売したとして,一部応援団が刑事責任を問われた事件がありました。
http://www.kobe-np.co.jp/kobenews/sougou05/0302ke80590.html
これは,まあ自ら作者を名乗って,CDという「著作物の複製物」を頒布したわけですから,露骨ですわ。真正面から著作権法121条に該当します。

もっとも,著作権とは,創作によって自動的に発生するもので,登録等の手続は必要ないため,他方できわめてあいまいなものに過ぎません。わた氏が持っていた著作権って,いったいなんやねん? 有限会社ゼンがわた氏から譲り受けた権利ってなんやねん? エイベックスが有限会社ゼンから何の許諾を受けてん? お察しのとおり全てがあいまいです。

したがって,有限会社ゼンは,明白な権利とするため,商標登録を出願したのです。 
http://ecweb1.avexnet.or.jp/sa4web/
これについては,次回!

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